No.23 冬の早朝、渋谷駅ホーム
冬の早朝、渋谷駅ホーム
平安時代に清少納言が枕草子で「冬はつとめて」と言っているのは、
早朝に火を起こしたばかりの火鉢を持っていそいそと移動するさまが冬の朝にふさわしいと思ったからだという。
2017年のいま、土曜の早朝から仕事に向かうために渋谷駅のホームに立っているとき、
ああ、たしかに「冬はつとめて」だなぁ、と思った。
まだ暗いうちに目を覚まし、布団に潜っていたい心を鬼にして体を起こす。仕事を始める頃には頭も少しずつ冴えてきて、冬の澄んだ空気の中を鋭い朝陽が射し込んでくる。
清少納言が衣擦れの音をさせながら火鉢を運んだ廊下と、始発のアナウンスが流れる渋谷駅のホーム。
千何百年の時間を超えて、彼女と私はきっと同じ朝陽を見ていたのだと思う。